うだるような暑さ、とは正に今のような暑さを言うのだろう。
「あーつーいー!」
そんな事を叫びながら、遠慮なくうちに上がってきたのは俺の幼馴染。相変わらず遠慮というものを知らないようである。
「そんな叫んだら余計暑くなるだろうが。ほらリモコン」
「二十五度くらいまで下げていい?」
「外との気温差が激し過ぎるとかえって疲れるぞ。二十七度くらいにしとけ」
「えー」
「文句言うな。嫌なら自分の家で二十五度でも二十度でもしたらいいだろう」
「うちに帰ったって誰もいないんだもん……間を取って二十六度は?」
「一人暮らしなんだから当たり前だろう。そうだな、二十七度にするなら冷凍庫に入ってるアイスを食べていいぞ」
「よし、二十七度!」
見事なまでに食欲に忠実な発言だ。贔屓目を除いても、この幼馴染は美人の類に入ると思うし実際男女問わずモテる方ではあるのだが。
リモコンのスイッチを入れた後で、幼馴染は飛び跳ねるようにしてキッチンへと向かっていった。俺も食べるかと思って、のっそりと立ち上がり後を追っていく。
幼馴染はもう選び終えたようだった。ソファの上に陣取って、カップアイスをつついている。うっかりショートパンツから覗く白い足を視界に入れてしまって、変な声が出そうになった。
「そんなとこに突っ立ってないでこっち来なよ。ほら、詰めるから」
お前は悪魔か。そう叫ばなかった自分を心の中で褒めつつ、努めて諸々意識しないようにして隣に座る。相変わらず暑いのは、きっと気のせいではないのだろう。