天界の花はただ一人のために愛を歌う

 

武骨で不器用な職人と歌癒士を目指す仙女が織り成す、一途な純愛初恋語り

 

【あらすじ】

 歌癒士(かゆし)を目指す仙女・桐鈴は、今日も一生懸命治癒の歌の練習をしていた。正式な歌癒士になる為の試験に向けては順調に仕上がっているけれども、幼い頃に知った『心から愛した人にだけ効果を発揮する特別な歌』に関しては、大きくなった今でもいまいちよく分からないまま。知りたい、歌えるようになりたいという気持ちはあれど、今は試験に集中すべきと言い聞かせ練習に励んでいた。

 そんな中、結婚して家を出た姉が半年ぶりに帰ってくる。小さい頃から留守がちだった両親の代わりにずっと一緒にいてくれた大好きな姉の帰省を喜んだのもつかの間、姉の義兄への深い愛情を知って嫉妬とも寂しさともつかない感情から気が晴れない日々を過ごしていた。

 気を晴らそうと思い立ち、地上の山の湖に沐浴に来た桐鈴。しかし、湖に潜っている間に天界に帰る為の衣を失くしてしまう。このままでは天界に帰れないと困り果て山の中を懸命に探すも、不注意で野犬に襲われそうになってしまった、その時。

「あんた、大丈夫か?」

 そう言って桐鈴に救いの手を差し伸べたのは、武骨な職人の男・弦次だった。

 

【主要登場人物】

桐鈴(とうりん)……主人公。天界で生まれ育った仙女。紫の髪に翡翠色の瞳を持つ可愛い系美少女で、仙力を籠めた歌を歌う事で患者の治癒力を高める事に長けた存在である『歌癒士(かゆし)』になるべく小さい頃から努力してきた女の子。

弦次(げんじ)……山の中で暮らす職人。外国の血が入っているため、髪は黒だが瞳は青色をしている。無骨な印象だが生真面目な部分もあり、面倒見の良い気性。困っていた桐鈴にも手を差し伸べるが……。

麗鈴(れいりん)……桐鈴の姉。銀の髪に青い瞳をしている。優秀な『歌癒士』であり、実績も多い。見合いで出会った男性と結婚して家を出ており、たまにしか帰ってこられない。

 

【本文】